歯周病治療について
歯周病とは
歯周病は、
- プラークの中に存在する歯周病原菌などの細菌因子
- 口腔内清掃不良、喫煙、過度なストレス、食生活など環境因子
- 年齢、人種、歯の数、糖尿病、免疫に関わる疾患など宿主因子
- 咬み合わせの悪い状態、歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)
以上の咬合因子、これら4つの要因が複雑に絡み合うことで発症し、進行していきます。
そのため歯科医院の努力だけでは歯周病を治すことはできません。
【患者さん自身による生活習慣の改善、口腔内を清潔に保つこと】と、【歯科医院でのプラーク、歯石の徹底除去、清掃不良になりやすい要因の改善や清掃指導、咬み合わせの改善や歯ぎしりからの保護】により歯周病の原因を取り除き、歯の安静を保つ処置していくことで病気を無くすことができます。
主な症状
歯周病
歯周病原菌(細菌)による感染症です。歯を支える骨が溶けてしまう病気です。
症状
発赤、腫脹、出血、排膿、動揺、歯肉退縮、知覚過敏、食片圧入、歯の移動、口臭、咬合痛
歯周炎
歯肉辺縁にあるプラークによって起こる歯肉の炎症です。
症状
発赤、腫脹、出血、ブラッシング時の疼痛
歯周病になる原因
プラーク、薬物による副作用(高血圧症の薬、抗てんかん薬、免疫抑制薬)、遺伝性疾患、HIV感染
歯周病になりやすい人
- 先天性のもの
- 遺伝性疾患、年齢・性別(男性より女性に多い、思春期や更年期に多い)
- 後天性のもの
- 喫煙、過度のストレス、糖尿病、肥満、薬物による副作用、HIV感染
歯周病のセルフチェック
- 歯肉が赤黒い
- 歯と歯の間の歯肉がきれいな三角形ではなく、腫れぼったい
- 歯と歯の間の隙間が広がっている
- 歯が長く伸びてきた
- 歯磨き時に歯肉から出血しやすい
- 歯の表面を下で触るとザラザラする
- 歯肉を押すと膿がにじみ出てくる
- 歯がグラグラと動く
- 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすい
- 上顎の前歯が出てきた
- 口臭があると指摘される
- 硬いものが咬みにくい
- 時々、歯が浮いたような感じがする
歯周病と全身疾患
動脈硬化、それに伴う狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、低体重児出産・早産、誤嚥性肺炎、メタボリックシンドロームなどを引き起こす可能性があります。
歯周病で抜歯を行った方が
良いケース
- 歯周組織(歯根膜、セメント質、歯槽骨)が根の先端まで破壊されてしまっている場合
- 治療により十分なデブライドメント(プラーク・歯石の除去)ができない状態の歯
- 治療中に頻繁に発熱や疼痛を伴う膿がでて、臨在歯を巻き込んでしまう状態の歯
当院の歯周病治療について
当院では、歯周病とはどのような病気なのか、どのように進行していくのか、どのようにすれば予防できるのかを動画でみて、患者さんの理解を深めていただき、患者さんと歯科医院の二人三脚で病気を克服していけるよう支えていきます。
歯周病治療の診療方針
歯周病はプラーク(細菌の塊)と歯石(プラークが石灰化したもの)が原因の感染症です。歯周病の進行を食い止めるためには何よりもプラークを取り除き、細菌の数を減らすことです。そのための治療を「歯周基本治療」と呼びます。
これは、患者さん自身が行う「セルフケア(ブラッシング)」と歯科医院で行う専門的な「プロフェッショナルケア」がセットになっています。
歯を残す治療
重度歯周炎で歯を残すメリット
- ご自身の歯を見た目上残すことができる(咬むと痛みがあるため機能させることはできません)
- 歯を抜かなければいけないという気持ちの整理をする猶予を作ることができる
(歯を抜かなければいけないのは変わりません)
重度歯周炎で歯を残すデメリット
- 周囲の健康な歯にも広がってしまう
- 痛み、腫れ、発熱、排膿などの急性発作が起きやすい
- 痛みがある場所を避けて咬もうとするため、通常の動きをしないのでその他の歯の歯周炎が進行してしまう
- 歯周病原菌により動脈硬化が誘発され、脳梗塞のリスクが上がります
- 歯周病原菌の内毒素により糖尿病の症状が悪化します
抜歯する治療
重度歯周炎の歯を抜歯するメリット
- 原因歯のせいで、その他の歯が悪くなることを避けることができます。
- 痛くて咬めない、膿が出てきて臭いが出るなどの不快な症状が改善します。
- 補綴処置(人工的な歯を入れる治療)を行う場合はできるだけ早期に抜歯したほうが、歯槽骨(歯の周囲の骨)を残すことができます。残せる骨が多く、周りと移行的であるほど補綴処置の予後が良くなります。
- 歯周病原菌は歯がなくなると細菌もなくなるため動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクを減らすことができます。
- 糖尿病の症状の改善がみられます。
保険治療と自費治療の比較
保険治療の場合
検査内容、検査方法 | 治療計画立案、歯周基本治療、再評価検査まで保険診療で行うことができます。歯周外科治療は保険適応の術式に限り行うことができます。 ※歯周病細菌検査(PCR検査)、歯周組織再生療法は保険外となっています。 |
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治療方法 | 保険診療に準じます。 |
治療期間 | 歯周病の重症度、進行具合によって異なります。軽度の歯肉炎の場合大体2、3ヶ月、重度の歯周炎の場合1年以上の治療期間がかかることがあります。 |
保険治療の限界や制限
保険治療では行うことができる術式、薬剤に制限があります。
自費治療の場合
検査内容、検査方法 | 歯周病細菌検査(PCR検査) 歯周ポケット内から検体を採取します。検体輸送容器に入れます。検査会社に郵送し、2週間前後で検査結果が分かります。 |
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治療方法 | 歯周組織再生療法 歯周病によって深い骨欠損がある部位を開いて、歯の根を徹底的にきれいにします。組織誘導因子を歯の周りに入れます。歯肉を元に戻し、糸で縫い閉じます。約1年程かけて骨を再生し、骨欠損と歯周ポケットを改善します。 |
治療期間 | 検査から治療終了まで1年2ヶ月程 |
骨欠損の範囲が大きな場合、メンブレン(歯周組織から再生に必要な薬剤を守る膜)や、骨補填材(骨と骨の間を埋めてくれる材料)が必要となります。また、歯肉を切開するための専用のメス刃や極細の縫合糸(ナイロン製やゴアテックス製の組織炎症反応を低く抑えることができる糸)を使用することができるのは自費治療となります。これらの器材や薬剤は、治療の成否にかかわってきます。
歯周病症状の段階について
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軽度歯周病
- 見た目
- 痛み
- 日常生活の支障
歯肉の色が赤くなり腫れます。歯磨きの時に歯肉から出血してきます。気づきにくいですが、支えている骨が溶け出すとそれに伴って、歯肉も下がっていきます。
痛みを伴わないため気づきにくいです。
痛みがないためこの時点では、ほとんど日常生活に支障はありません。
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中等度歯周病
- 見た目
- 痛み
- 日常生活の支障
歯を支えている骨が大きく溶けてくるため、歯と歯の間の歯肉が下がり、歯と歯の隙間が大きくなってきます。歯根に付いた歯石が歯肉から透けて少し黒く見えるところも出てきます。歯根が見えるところも出てきて歯が長くなったように見えます。
以前に比べて歯が少し動くような箇所が出て、歯が浮くような違和感や痛みを感じる時があります。
歯周ポケットの深い場所は膿が出てきます。膿や清掃不良による口臭を他人から指摘されたり、硬いものや弾力が強いものを咬むのが難しくなってきます。
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重度歯周病
- 見た目
- 痛み
- 日常生活の支障
歯肉は大きく下がって歯根が見えてきます。歯肉は赤黒く腫れており、自然に出血と膿が出てきます。
普通の硬さの食べ物でも咬むと痛みが出ます。歯ぐきが腫れて、歯ブラシが痛みで当てられません。歯根の大きな露出により知覚過敏で痛みが出ます。
重度歯周炎がある歯で普通の食事をとることが難しくなります。歯と歯の間の隙間がさらに大きくなり、歯がグラグラと動いて、歯と歯の間に食べ物がより詰まりやすくなります。毒性の強い細菌による酷い口臭が出ます。
歯周病治療の流れ
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医療面接・精密検査
現在の歯磨きと生活習慣の聴取、全身疾患・常用薬の確認
歯周検査、口腔清掃状態、口腔内写真、レントゲン写真、咬合関係のチェック、顎関節のチェック、細菌検査
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治療計画とカウンセリング
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歯周基本治療
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再評価検査
口の中の細菌を完全になくすことは難しく歯周病は再発し易いので、治療完了後も定期的なメインテナンスが必要となります。
再発防止には、患者さま自身による歯垢(プラーク)のコントロールだけでなく、定期的に歯科医師や歯科衛生士による検診・治療を受け、歯をメインテナンスすることが重要です。
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歯周外科治療
検査の結果、歯周ポケットが改善されない場合やポケットが深く歯石・プラークが残ってしまい除去できない場合、ポケットを除去するためもしくは失われた歯周組織を再生させるために歯周外科治療を行います。
歯周病の予防について
歯科医院でできること
プラーク・歯石の除去、歯科医院専用の器具を使って歯の表面をつるつるにするPMTCを行う事で治療後にプラークがつきにくくなります。
自宅でできること
- 丁寧にブラッシングする
- 歯間ブラシ・フロスを使用する
- 健康的な食生活・十分な睡眠をとり、疲れやストレスを溜めないようにすることで免疫力を高め、歯周病にかかりにくい体作りができます
歯周病の治療法
スケーリング
歯に付着しているプラークと歯石を除去すること。
スケーリングの必要性
プラーク・歯石が残っていることで、歯周病の発症・進行していきます。そのためスケーリングによりプラーク・歯石を除去することが重要です。